月も星もない夜はどこまでも真っ暗闇で、それはもう、忍びである佐助には実はそれでもずいぶんと先まで見えているけれども傍らのこの純粋すぎるおひとにはたぶん、ほとんど何にも見えちゃあいないだろう。自分の手足さえおそらく。鼻をつままれたってわからないくらい。
 これは安心していいのか不安がるべきなのか、佐助は瞬きを繰り返して答えを探す。主はいつもどおり堂々とした様子で、任せたぞ佐助、とお気楽だ。
 泣いたって気づかれやしない。
 思って、しかしそんなのは別に夜闇に限った話でもなかった。
 いつまでも幼子のような体温の手を取って、はいはい任せてくださいな、と佐助は言う。なるたけやさしく。

 さあさおうちにかえりましょ







わたしを呼んでね
20120425
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