相変わらず美人だねえ、と心底思ったのでその通りに言ってやると、その相変わらずの美人はこんな生き物が存在しているなんて信じられない許せない、とでも言いたげな顔をして、本当にはそこまでは言わなかったけれども、吐き捨てる口調できつくふざけるなと言った。ふざけてないよと佐助はまた心底から答えて、さらに何か言い募ろうと形のいい唇が開くのに、ぴっと人差し指を立てておさえる。 「相変わらず美人で、賢くて、……ばかで、優しいよ。おまえは」 柳眉がぐうとめいっぱいに、これ以上はないだろうくらいに寄せられて、それでもやはりかすがはうつくしい。怒っていてもこれほどに美人なのだから笑えばもっと美人だろう。泣いてもそうかもしれないが。 「おれはおまえを泣かせたくないよ」 佐助は立てていた指を戻して、手裏剣の持ち手をくっと握り直した。くろい刃がしろい喉元で輝く。 「だからおまえにだけは殺されてやれない」 それくらいならおまえを殺すよ、と心底から囁いて佐助はわらった。
全てを失くせる程君は強くない
お題:菖蒲 |