佐助のところの冷蔵庫はいつもきちんとしている。白くて小さくて、上下二つに分けられていて(上は冷凍室になっている)下のドアにはメモが何枚か貼っ付けられいて、それぞれのなかには必要な物が過不足なく収まっている。政宗のように水とカロリーメイトだけなんてふざけたこともなく、元親のように入れっぱなしで奥においやったままだめにしてしまうなんてこともない。
 食べる物といえばコンビニで済ませてしまう元親からしたら冷蔵庫なんてビールをしまっておくための場所でしかなくて、その上もうしばらく自分の部屋へは帰っていないから明日にはまた何か(納豆やプリンなんか)がゴミ袋行きになるかもしれない。しまった。買うときはもちろんちゃんと胃に収めるつもりでいるのに、実際のところ元親の冷蔵庫に入った物たちがゴールできることはあんまりなくて、大半が不可抗力的にリタイアすることになる。日付を確認して、ちょっとにおいなんて嗅いでみたりして、それからやっぱりゴミ袋へ入れるときのあの気分。地味にへこむ。ちょっとぜいたくしていいプリンなんか買ってたときはとくに。
「ねえさっさと閉めてくんない?」
 なにぼーっとしてんの? 横からひょいと出てきた顔が元親を覗き込んで、かけていたままの手ごと押されてドアがぱたんと閉まった。人工の冷気がぱっと散らされる。
「ああわりい」
「電気代もったいない」
「わりいって」
「何考えてたの」
「いやうちの冷蔵庫んなかどうなってたかと思ってよ」
「携帯なってる」
 言われて見るとサイレントモードにしていた携帯に青いライトが点っていた。伸ばした佐助の人差し指の先が染まっている。
「ああ、」
 元親がそれを切ってそのまま電源を落とすと、佐助は嬉しそうに笑ってビールを出した。
「政宗かっわいそう」







骨は三番目の冷蔵庫へ
お題:星葬
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