かつては確かにうつくしいと感じていた筈のものをいまではもうどう捉えることもできない。瞬きの際、まぶたの縁を漂うだけだ。鋼にのると言い得ないいろになるとカイエンが知ったのは、己の刃でではなく、あの美しき女将軍殿が振るう元でだった。以来こびりついて離れない。何時か目が眩むのではないかと思う。恐れなのか或いは、指に震えを覚えるときもあった。
「カイエン」
「……ああ、セリス殿」
「見張りご苦労様。朝食まで少し休んで。代わるわ」
「かたじけない」
 音も無く。柔らかに空気を含んで微笑む、その様は既に立派な女性だった。若しくはそれだけの。
 燃え残る空に向けた背を押すのか、圧すのか。
「あかい……」
 最早何とも切り離せないいろがある。







朝焼けを殺すほどの憎しみか、朝焼けを生かすほどの愛しさか
お題:9円ラフォーレ
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