突然強い風が吹いて、あおられてふらついた背をさっと支えてくれた腕はぶきっちょを隠そうとしてぶっきらぼうを装ってやっぱりそれにも失敗する、エアリスのかわいいかわいいひとのものだ。とっさに下ろしたまぶたをまた持ち上げて振り返ったら、静かな青い目玉が二つ、しんと満ち引きなく深い色のままでエアリスを見下ろしていた。でも一呼吸する前に目の縁の緊張がそっと緩んで、彼が驚いていたことがわかる。
「気をつけろって言ったろう」
「ありがと」
 ここはいつもよりうんと太陽に近いからか、彼の金糸は綿毛のようにふわふわと、気ままに自由にしているらしい。「髪……」手を伸ばすと見た目よりやわらかく指通りのいい髪がするりと抜ける。「ぼさぼさ、ね」微笑みがこぼれる。
 クラウドはいつものように眉をしかめて、エアリスの背中にやっていた腕をもう少し上げた。それから手前に戻してくるところで、エアリスの額と瞳にも影が落ちて、暗くなった視界にひらりとたんぽぽに似た淡い色が舞った。
「あんたもだ」
「ありがと」
 クラウドはかわいい、かっこいい、それからやさしい、ということもこの船に乗っているみんなが知っていて、だからエアリスはこういうときとくべつ幸せな気持ちになれる。不器用な指がほんの少し髪を撫でて、頬を掠めて、しっかりとした手首の血管の浮いた内側が耳の先に触れた。ゆっくり丁寧に、たっぷり時間をかけてからクラウドの両手は持ち主の元へと戻る。どくん、と鼓動が聞こえた気がした。
「…………」
 クラウドは言葉にまでぶきっちょでいるみたいに、慎重にしんちょうに、大事にだいじに発音しようとしてくれる。青い瞳が繊細なまつげの向こうで瞬いて、空飛ぶ船が風をまく。頭の後ろでさらっぴんのリボンが不器用に泳いだ。
「誕生日おめでとう。エアリス」
 ありがとう、と、めいっぱいの大切を込めて。







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20100214
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