鼻歌を歌いながら編んでいた花冠を完成させて、「はいっ」とエアリスは、嬉しそうに、なんとクラウドにそれをかぶせた。しろつめくさで編まれた花冠はいかにも繊細で、ぽつぽつとついた白い花がすごくかわいらしい。金色い頭のうえにふんわり乗っている。クラウドはびっくりしてその大きな青い目をぱちぱちさせているが、ザックスは案外と似合ってしまっていることに驚いた。エアリスはにこにこにこにこ、クラウドの頭に乗っけることそこまで含めてそれで完成、みたいに満足げにしている。
「えっと、エアリス?」
「クラウド、かわいい!」
「えっ」
 かわいいかわいい、とエアリスは上機嫌だ。いいとしの男の子の常として、クラウドはそんな言葉はほしくないし嬉しくないんだけれど、エアリスがあんまり嬉しそうだし楽しそうだし、エアリスが嬉しくて楽しいんならクラウドも嬉しい楽しい、悪くない、みたくなって動けなくなっている。言ったとおりしろつめくさの花冠は繊細だから、下手に取ろうとして壊してしまうのが怖いんだろう。ザックスはそんな二人を見て、かわいいなあ、と幸せな気分になった。最近クラウドとエアリスは仲が良い。
「ね、ザックス?」
 エアリスが同意を求めて振り向いて、クラウドは照れたようなばつが悪いような、助けを求めるような目でザックスを見る。どうしよう、とザックスは思ってでもとりあえず素直に頷いた。
「ああ。かわいい」
「ザックス!」
 男に言われたってちっとも嬉しくないので(気持ちはよくわかる)、クラウドが抗議の声をあげる。でも頭のうえに手を伸ばすことはしなくて、ちょこんとかわいらしいまま。
 でしょ、と得意気なエアリスの手をとって、やわらかいてのひらにザックスは新しく千切ったしろつめくさを乗せた。エアリスの目が疑問符を浮かべてまっさらになる。ザックスを見る。
「かわいいからおれのも作ってよ」
「え?」
「で、やりながら作り方教えて。おれはエアリスに作るから。結構器用なの知ってるだろ? ほら、おれもかわいいかも」
 ザックスは両手でエアリスの細くてしなやかな手を包み込んで、折れない程度にぎゅっと握った。ひんやりしてちょうどいいくらいにあたたかい。ザックスはこの手がとても、ときには困ってしまうくらいに好きだ。
 だから。
「でもエアリスがいちばんかわいい」
 言うと、エアリスはいっしゅん息を止めて、次に吐いて、うっすら頬を染めて目じりを緩めた。エアリスも困ってしまったようにわらう。
 その後ろではクラウドも照れた顔をして、ザックスと目が合うとばつが悪そうに俯いた。最近クラウドとエアリスは仲が良い。







ワルツ
20101005
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