それを見つけたのは偶然だった。
 長く出張中(彼は帰ってくる、そうでしょう?)の上司のデスクから必要な書類を探していたら、いったいぜんたいどうしてか、それが避けようもなく目に止まったのだ。だからその一葉の写真を、イリーナは何の気なしにめくってみた。そして後悔した。
 そこに映っていたのはイリーナの知っているよりいくらか幼い、まだ少女と言えそうな女性だった。イリーナの知っている……とは言ってもイリーナが知っているのは名前に年齢、簡単な生い立ち、神羅にとっての価値といったデータでしかないけれど。彼女が何を思って生きたのかも、死んだのかも、上司との間に何があったのか(なかったのか)も何も知りはしない。
 しかしこの写真が特別なものだということだけは、よく、わかった。イリーナよりまだ何も知らない、心底の赤の他人が見れば何の変てつもない、素人撮影のスナップ写真でしかないがそれでもその他人にだってわかるだろうくらい。理由もなく説明もなくただ。
 特別だ、これは。







西で燃やせば灰になるのか
お題:泳兵
20110205
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