三百年の孤独。
 そんなものは、彼にはまったく想像もつかない。そのたった二十分の一程度の彼の人生でさえ、もうあまりに多くのことがありすぎているように思えるのに。いまの彼には、彼の人生がコントロールできないでいる。流されて流されて、遠くまで来すぎて、どこにいるかもわからないから流され続けている以外にしようがない。きっとこの流れからは降りられない、ということだけがうっすらとわかる。
 ふるえるほどあたたかい布団のなかで、左手を強く握りしめる。
 子どもでいられた日々の親友から託された力は、彼にとって呪いでしかない。そしてそれは親友にとってもそうだったのかと思うと、彼にできることは何もないという気がしてくる。
 三百年の孤独。
 そんなものは彼にはわからないが、親友と過ごした十数年が、彼に恨むことを許さない。このずきずきと痛む手を抱えたまま、どこか行き着けるところまで、流れていくしかないのだとただ思う。
 広大な城の、ひとりの部屋で、骨まで染みる無力感だけを友に彼は眠る。








魂を喰らうもの
20120425
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