しばしば、そしてほとんど唯一と言っていい面会に訪れるその少女に対して、彼は果たしてどう思っていいのだかわからないでいるところがある。彼が少女について知っていると言えることはとても少ない。しかし十分であるとも思っている。必要なものは限られていて、それ以外は彼にとって意味をなさない。彼が少女に求めることはごくわずかで、そうして数少ないそれらも結局は正当ではないのかもしれない。どちらにせよ、甚だ失礼な話だ、と彼は薄ぼんやりと自身を嘲笑する。
 小さな窓から入ってくる光が、彼の随分と狭くなった世界を弱々しく照らしている。少女は細い首を傾げて、長い髪がさらりと流れた。
「で、コーヒー飲んでみたんですけど……」
 彼が愛した女に似ているとも思うし似ていないともまた思う。面影を探す隙はいくらでもあって、しかしそのいちいちに思い出を貼り付けられるほどに近くはない。似ていない姉妹だ、と思う。だが確かに姉と妹で、そしてそれが彼にとっての最大の意味だ。少女にとってもそうだろうと思うのは侮りでも何でもなく。いつだって世の中には単純な事実しかない。
 例えば、唇に馴染まないだろう話題をたどたどしく繋げる少女が、それでも幸せそうに見えることも。







ロストロストロスト、アンドギブン
お題:goz
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