心臓を食べてしまう化け物の話をしようか。
 花京院が、すこし、意地悪にも聞こえるかもしれない口調で言うと、退屈そうにテーブルに頬をぺったり付けていた徐倫は、ぱっと跳ねるように顔をあげた。拍子に、お絵描き用のクレヨンが転がったけれど気にもしない。ひとりきりでのいいこのお留守番に、随分膿んでいたらしい。
 あとでちゃんと片付けさせようと思いつつ、のんびりした昼前に、花京院は幸せな気分で話し始めた。

(心臓を食べてしまう化け物の話)

 言葉が口をつくままにとうとうと語る花京院に、徐倫は割合おとなしく、きちんと話を聞いていた。何がどうというわけでもないこの上品さは、少女の父親に似ている点の一つだ。本能が鋭く、賢いところも。
「それって、要するにあいの話?」
大人ぶっていう少女に、花京院は既にない心臓をびっくりさせられた。
「君がそう思うなら、そうかもね」








心臓を食べてしまう化け物の話
20120425
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