とても、とってもめずらしいことにブレラが眠っている。それを見つけたランカは始めひどく驚いて、それからどうしてか慌てて、おしまいにやっと落ち着いたいまは、音のない音がずっと心臓を響かせている。幸せとか優しさとかそういうものがごった煮になって胸の奥でぐらぐらしている。くらくらする。
 ふいにこぼれた一部が、胸から肩、腕を通って指のつめの先にまでやってきてランカを動かした。
「……おにい、ちゃん」
 サイボーグとなった兄の肌はだけれど、ランカの知るずっと以前と同じにあたたかかった。間のない兄妹の時間はだからあの頃といまが隣り合ってとても近い。起きないで、と願いながらランカはてのひらを広げてその頬を包む。知っている。
 触れるだけで泣けるようなひとがいったいいくらいるだろう。
 アルトに対する、甘くてときには苦い恋とは違う、オズマに対する、不平不満まで飲み込む親愛ともまだ違う。いとおしいと、ランカはただそればかりを思った。
 二つのまぶたが持ち上がる予感を知っている。







キスもハグもできないきみがいとおしいと思うのです
お題:にやり
20101006
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