「スネーク?」
 トラックの荷台に横になって、見ればスネークはいつの間にやらすっかり眠っているようだった。右の目には眼帯をして、左の目にもまぶたを下ろして、こんなにもロイをこき使っているという現実をとっと遠ざけている。眠っていてもバンダナはくくったままで、余った分が片方首根っこにかかっている。
 すうすうと子どものように健やかな寝息をその布切れがいつか妨げそうな気がして、ロイは足音を控えもせずに荷台に上がってぴくりともしないからだに近寄った。それで起こしてもかまわないだろうという気持ちもあったし、それくらいじゃ起きないだろうというふうにも見えた。スネークを同じかたちに、一回り大きくなぞったところに深い、始めと終わりがきっちりと閉じた眠りがある。まるで死んでいるようだ。生きている死体とはつまりこれだろう、とロイは思う。
 やはり(と言えるだろうか)頭の横にロイが立ってもまつげを震わせもしないスネークの、首に垂れたバンダナを……払おうと右腕を動かしたところで、その必要はない、ということがロイにもわかった。
「何だ?」
 語尾の上がった音は問いかけで、それでロイは素直に答えた。
「寝にくそうだな、とな」
「……別に悪夢を見てはいなかったが」
「そうか? それは悪かった」
「いや、いい」
 だがすこし眠らせてくれ、とスネークは言って、自分の手で余ったバンダナを後ろにやった。ロイは結局スネークの傍らにひざをついただけで、もちろん、と頷いた。







触れることさえ叶わぬよ
お題:環
20100408
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