現実人間に行使できるのはあくまで魔術であって、才能が大いに関与する小手先の技術に過ぎない。このちからがいかほど彼を他人から遠ざけて、孤独にしようとも、それはおとぎばなしの奇跡とは違う。敵を討ち、傷を癒し、夜道を照らし冷えたからだを温める。たったそれっぽちのことだ。
 鮮やかな金糸を指に絡めて、ほどいて、梳いて、また触れる。長かった髪を毛先まですうっと滑らせてみておけばよかった。
 見下ろす澄んだあお色の瞳がまどろんで、あまやかに彼を呼ぶ。彼の、彼のためだけの名前を象って唇がほころぶ。
 乱れた前髪を整えてやって、そこに一つキスを落とす。
(とじこめてしまいたい)








まほうをかけてかぎをかける
お題:泳兵 20111101
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