中途で折れることのない陽射しが、開かれた空からまっすぐに落ちる。きっちり足の下にだけ黒々とした影を焼き付けて、他には等しく光を降らせる。足を運べばついてくるから振り切れない影と、涼やかな水の音もこのオアシスのどこに行こうと聞こえている。
 ぱたぱたと軽やかに迫る足音だけが、もしかしたら置き去りにできるもの。
「クワン!」
「シャクヤさま。また脱け出して?」
 軽やかなのも当然の、まだまだ幼さの色濃い少女。小さな背から見上げてくる視線もかわいらしいだけのもので。この箱庭のような楽園から一歩でも出てしまえば、婚約者、という肩書きは簡単に笑われてしまうだろう。とてもおかしい。
 少女は頬を染めている。陽射しと温度と運動と、それから自らの素直さに。
「今日はいい天気ね。暑くない?」
「暑いですね。さあ、お送りしますから戻りましょう」
「え、あ……」
 さ迷った視線は、しかしすぐに求めるものを手に入れる。そういうのは純粋な者にだけ与えられる特権なのかもしれない。
「ね! あっちの道は陰になってるわ。あっちから帰りましょう」
 細くしなやかではあるがたおやかさには欠ける指が示した方向は、目的地にはややずれている。つまり遠回りになる、ということだ。
「暑い、でしょ……?」
「暑いですね」
 結局、どれ一つさえ離すことができない。







真昼のオアシス
お題:ソミュール
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