「青いねィ」
 沖田が呟くと、となりの男はとりあえずの付き合いみたいに少しばかり眼球を動かした。尖ったかたちのそれをちらと沖田に向けて、それから曖昧にあるいは無関心に一瞬さ迷わせる。沖田はそれを意識のいくつかの部分で受容していた。いくつかの、暇な部分で。つまりスクリーンに勝手に映り込んでいた。 沖田の瞳はひとによっては丸いとも言われる。
「曇ってんだろ」
 彼はだいたいにおいて察しが悪い。頭も勘も鈍くはないけれど、含みを持たせた言葉を受けとるのは上手くない。それこそ腹に一物も二物も入れてるみたく悪そうに笑んでみせるくせに。真っ直ぐなのだ、おそらくは。似合わないくらいに。
ベランダから見る校庭は狭い。玄関からでも校庭の真ん中から見ても、走っても狭い。同じだ。
「これだから土方さんは駄目なんでェ」
「アァ?」
 煙草の煙が流れていくのを見ている。今度は少し意識して。けしてこちらには来ないように、彼はいつもそういうところに立っている。位置をはかって。だから沖田はらくに呼吸をすることができる。けれど目障りだ。
「おまえもな」
「はい?」
「十分青いよ」
 彼はだいたいにおいて察しが悪い。頭も勘も鈍くはないけれど、含みを持たせた言葉を受けとるのは上手くない。それこそ腹に一物も二物も入れてるみたく悪そうに笑んでみせるくせに。けれど受けるのと発するのとは別の器官の仕事であるし、やっぱりその笑みの通りに腹は黒いし、やっぱり頭も勘も鈍くはない。沖田も。その口の端に含まされているものに、気付かずにいられるたちではないのだ。
「桃頭は目立つだろ」
「死ねや土方」
 しかしやはり真っ直ぐにすぎる。







ブルーハワイの海
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