罪を背負わない人間はいない。自分は本当にまったく頭のてっぺんから足のつめの先まで清廉潔白です、だなんて胸をはって言える人間がいるとしたらそんなやつは全身くまなく解剖して研究させてみるべきだとアニスは思う。ジェイドやディストに任せたら喜ぶだろう。
 今日がどんなに穏やかな昼下がりで、世界がまるきり怠惰なこうふくにまどろんでいてもアニスはあのひとを忘れるべきでない。忘れようもない。それは完璧にそっくりな少年がアニスに向けてにこにことほほえみかけてくれるからじゃない。
「アニス、気持ちのいい日だねえ」
「そうね。お茶にしようか、フローリアン」
「うん!」
 だからアニスはたくさん幸せになろう。







どんなささやかな幸福も後ろめたい
お題:晩餐
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